加齢やスポーツ、外傷などが原因で、膝の関節にあるクッションの役割を果たす「軟骨」がすり減り、関節が変形してしまう病気です。膝の痛みや腫れを引き起こし、初期には歩き始めや階段の昇り降りで痛みを感じることが多く見られます。進行すると、安静時にも痛みが続き、日常生活に支障をきたすことがあります。
現在行われている治療の多くは、痛みなどの症状を和らげることを目的としており、すり減ってしまった軟骨そのものを元の状態に戻す治療は、これまで限られていました。そこで近年注目されているのが、患者さんご自身の細胞のちからを活かして軟骨の再生を目指す「再生医療」です。
治療は大きく「保存療法」「手術療法」「再生医療」の3つに分けられます。症状の程度やご年齢、生活スタイルなどをふまえ、患者さんお一人おひとりに合った方法を、医師とともに選んでいきます。
| 治療法の分類 | 主な内容 | 対象となる方 |
|---|---|---|
| 保存療法 | お薬による治療、リハビリなどの運動療法、サポーターや杖などを使う装具療法 | 症状が軽い方、まずは手術以外の方法を試したい方 |
| 手術療法 | 関節鏡視下手術、骨を切って角度を整える高位脛骨骨切り術、人工関節手術 | 保存療法で改善しない方、症状が進んだ方 |
| 再生医療 | PRP療法、幹細胞治療、自己細胞シートによる軟骨再生治療 | 関節をできるだけご自身のまま残したい方、根本的な改善を目指したい方 |
人工関節に置き換える手術は、痛みをしっかりと改善できる有効な方法ですが、ご自身の関節を人工物に置き換えることになります。
一方、自己軟骨細胞シートによる再生治療は、患者さんご自身の細胞を用いて、ご自身の関節を残したまま、傷んだ軟骨の再生を目指す治療です。「関節を温存しながら、根本的な改善を目指せる新しい選択肢」として、多くの期待が寄せられています。
患者さんご自身の体から採取したごく少量の細胞を、うすい膜のような「シート」状に培養したものです。このシートを傷んだ部分にそっと貼り付けることで、組織の修復や再生を促すことを目指します。
患者さんご自身の軟骨細胞を培養してシート状に仕上げ、傷んだ膝の軟骨へ移植する再生医療です。細胞シートは、損傷した軟骨をやさしく保護すると同時に、成長因子を分泌して軟骨の再生を促すことで、膝関節が本来もっている機能の回復を目指します。従来の保存療法や人工関節手術とは異なり、ご自身の関節をできる限り温存しながら治療を行うことを目的としています。
外傷や変形性膝関節症により、膝の関節軟骨に損傷がある方が対象となります。ただし、実際に治療をお受けいただけるかどうかは、診察や検査の結果を踏まえて、医師が総合的に判断いたします。
安全に治療を進めるため、以下に当てはまる方は、この治療をお受けいただくことができません。
治療は、患者さんの膝からごく少量の組織をお預かりし、専用の施設で細胞シートを製造したうえで、あらためて移植手術を行う流れで進みます。
| 段階 | 内容 | 期間・入院の目安 |
|---|---|---|
| 関節鏡検査・組織採取 | 膝から軟骨・滑膜組織を採取 | 入院 約1日 |
| 細胞培養 | 専用施設で細胞シートを製造 | 約3〜4週間(通院不要) |
| 細胞シート移植手術 | 傷んだ軟骨部分にシートを移植 | 入院 約1週間以内 |
| リハビリ・経過観察 | 装具装着とリハビリ、定期診察 | 外来通院 |
担当医から、治療の内容・期待される効果・リスク・費用について、時間をかけてご説明いたします。ご質問にお答えしたうえで、患者さんご自身のご意思で治療を受けるかどうかをお決めいただきます。
問診、血液検査、既往症の確認など、全身麻酔手術を安全に行うために必要な術前検査を実施し、治療を受けていただけるかどうかを確認いたします。
全身麻酔のもと、膝の周囲に2〜3か所の小さな切開を加え、内視鏡(関節鏡)を挿入して関節内の状態を確認します。治療の対象と確認できた場合、体重がかからない部分から「軟骨組織」と「滑膜組織」をそれぞれ1〜2グラムほど、ごく少量採取します。検査後は、1日ご入院いただきます。
お預かりした組織は、細胞シートを製造する株式会社セルシードの細胞培養センター(CPC)へと運ばれ、およそ3〜4週間かけて丁寧にシート状へと仕上げていきます。製造されたシートのうち1枚は安全性を確認する検査に使用し、一部は移植後の検査に備えて保管いたします。
※株式会社セルシードのCPCは、厚生労働省より特定細胞加工物製造の許可を受けた施設です(施設番号:FA3160008)。
移植手術の前に、製造できた細胞シートで軟骨のどの範囲を覆えるかを含め、「膝関節軟骨損傷に対する自己軟骨細胞シート移植に関する説明書」に基づいて、治療内容をあらためてご説明します。治療を受けるお気持ちに変わりがないかを確認したうえで、手術に進みます。
手術では、傷んだ組織をきれいに整えた後、骨にごく小さな穴を開けて骨髄からしみ出す血液の上に、細胞シートを覆うようにして貼り付けます。細胞シートを周辺の組織に縫い付けることはありません。
入院期間は1週間以内を予定しています。手術後、しばらくの間は装具(サポーター)を装着していただき、通院にてリハビリを行います。
術後の経過やリハビリの状況について、レントゲンやMRIなどの検査を行いながら、担当医が定期的に総合的に診療いたします。治療の効果を長く維持していけるよう、丁寧にサポートしてまいります。
この治療は現在、公的な健康保険の対象にはなっておらず、自由診療(自費でお受けいただく治療)となります。
| 日程 | ご請求金額(税込) |
|---|---|
| 組織採取日の3日〜1日前 | 440,000円 |
| 組織採取日〜組織採取後7日目 | 2,220,000円 |
| 組織採取から8日目〜移植日 | 4,400,000円 |
| 細胞シート製造を延長した場合 | 4,840,000円 |
治療の総額は、原則として4,400,000円(税込)です。この金額には、診察・検査・組織採取・細胞シート製造・移植手術・入院にかかる費用がすべて含まれます。
現在、先進医療の患者様の募集は終了し、東海大学病院で自己軟骨細胞シート治療は行われておりません。
従いまして、先進医療として自己軟骨細胞シートによる再生治療を実施した佐藤医師が、当院・池上総合病院におきましても診療を担当いたします。
予約制診療です。当院の整形外科外来のご予約を承っております。