重要なお知らせ

赤ちゃんの頭のかたち外来

2022年10月17日(月)より予約受付開始

頭のかたち外来のご紹介

お子さんやお孫さんの頭のかたちで、気になることはありますか?

頭のかたちには個性があります。丸みも左右のバランスも、お子さんひとりひとりで違います。また、頭の形をどれぐらい気にするかについてもご本人、ご家族ともに個人差があります。お子さんやお孫さんの頭のかたちが気になる方、もしかしたら何らかの病気のサインではないかと心配されている方、そんな方々の疑問や悩みに対して明確に答えること、そして解決策を提供することが頭のかたち外来の役割です。赤ちゃんの頭のかたちのことが気になったらお気軽にご相談ください。

頭のかたちに対する関心の高まり

近年、お子さんの頭のかたちを気にされる方が増えています。

欧米では頭のかたちに対する関心が以前から高く、2000年代からは変形に対する理学療法やヘルメットを用いた頭蓋形状矯正療法が広く普及し、現在は頭の変形に対する対処方法が科学的に検証されてガイドラインにまとめられています。歯並びを気にして積極的に歯科矯正を行う欧米の方は頭のかたちも気になるのかもしれません。日本における関心の高まりはこのような海外での動向に影響されて始まり、従来は一律に「時間が解決する」と説明されてきた頭の変形の一部は自然には軽快しないという知識の広まりによって醸成されてきました。

頭の変形・ゆがみ

もしかしたら病気かも?

赤ちゃんの頭のかたちのゆがみを見てもしかしたら病気かも?と思われることが一番気になることだと思います。
確かに極めて稀ではありますが、頭のかたちのゆがみの原因に頭蓋骨縫合早期癒合症という先天性の病気が隠れていることがあります。 頭蓋骨縫合早期癒合症があると特徴的な頭の変形が生じることが多いのですが、日本人には稀な病気であるためなかなか診断がつかないこともあります。なかには頭位性斜頭(むきぐせ)・短頭(ゼッペキ頭)と見分けがつかないかたちになることもあります。この病気のお子さんは専門的な医療機関で早期に手術を受ける必要があるため、頭のかたちについて専門的な知識をもっている医師の診察や病気の早期発見は赤ちゃんの助けになります。また反面、病気ではないと判断され、安心していただけることもこの頭のかたち外来を受診いただくメリットになると思われます。

どうして頭のかたちは変わってしまうの?

赤ちゃんがお母様のおなかの中にいる時期(胎生期)に頭に圧力がかかったり、産まれた後の頭の姿勢によって頭のかたちは変化します。図のように生後の頭の向きによっては後頭部の平坦化が見られます。この平坦化が片側だと頭位性斜頭、両方に見られると短頭と言われます。頭位性斜頭はいわゆるむきぐせ、短頭はぜっべき頭のことを指します。ここで強調しておきたいのは頭位性斜頭・短頭は病気ではないということです。

放っておくとどうなる?

アメリカの調査によると頭位性斜頭・短頭のお子さんは年齢とともに改善することが多いようです。イメージとしては歪みが軽度の子供達は正常に近い頭のかたちに改善し、歪みの強い重度の子供達もある程度改善はしますが、軽度から中等度で変形が残存するようです。

発達には影響しない?

頭のかたちのゆがみが発達に影響しないかどうかということも心配になる点だと思います。頭位性斜頭の赤ちゃんの発達は2歳くらいまでは運動発達、言語発達が遅れることはあるが徐々に追いついて来るという報告があり、病気ではない頭の歪み、つまり頭位性斜頭・短頭は発達には影響しないというのが一般的な考え方です。

では、頭の歪みがあって困ることって?

頭のかたちの歪みが強いと耳の位置が左右で変わったり、顔にまでゆがみが及んでしまうことがあります。また左右のゆがみや後頭部の平坦化があると例えばポニーテールがきれいに結えない、丸坊主にすると格好が悪い、自転車用のヘルメットが被りにくい、野球帽が曲がってしまう、メガネがずれてしまうなどちょっとした日常生活の不都合があるようです。これはあくまでも容姿についての問題なのですが、やはり将来に髪型などで悩んでほしくないとご家族がご心配されるお気持ちはよく分かります。

頭の変形・歪みへの対処法

繰り返しになりますが、頭位性斜頭・短頭は病気ではありませんし、ある程度大きくなると改善することもあり、ある意味赤ちゃんの個性であるとも言えます。ただしこれも繰り返しになりますが、ゆがみが強くなると耳の位置に左右差が見られたり、お顔のゆがみを生じる場合もあります。

1. Active counter-positioning(ACP)

頭位性斜頭・短頭の赤ちゃんは仰向けの姿勢でいるとゆがみが進んでしまいます。そのため赤ちゃんが起きている時はうつ伏せで遊んであげる、またベビーマッサージを行うなどACP(日本語訳:積極的な体位変換)を行うことでゆがみの進行を防ぎある程度改善することが望めます。これは積極的に体位を変えることによって頭にかかる圧力を一定の方向にせず、分散する目的でおこないます。特にまだ首が座っていない時期から開始することが効果的と言われております。このACPに関してはパンフレットをお渡ししてご案内させていただきます。

※赤ちゃんが寝ている時のうつ伏せ寝は乳児突然死症候群の危険性が高くなるため推奨できません。

2. 頭蓋形状誘導法

中等度から重度の頭位性斜頭・短頭に対してはヘルメットを用いた頭蓋形状誘導療法も適応となります。当院では、2012年頃から日本に導入され、2018年4月に日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)から医療機器として薬事承認を受けた「ミシガン頭蓋形状矯正ヘルメット」、2022年5月に薬事承認された『ReMObaby』のヘルメットを治療に採用しています。このヘルメットは他のヘルメットと異なり終了まで担当医・担当装具師が毎月拝見します。

治療事例

〈診断〉短頭+右頭位性斜頭 / Yちゃん(仮名)
診断 短頭+右頭位性斜頭
通院期間 2022年12月5日~2023年6月12日
ヘルメット装着期間 生後5か月~11か月

治療前後の計測結果

〈上段〉器具による計測値
〈下段〉3Dスキャナーによる計測値

治療前 治療後
頭囲
424mm
44.8cm
453mm
130mm
129mm
134mm
137mm
前後 125mm
137mm
140mm
148mm
幅/前後
(CI)
104% 最重症
94% 軽症
95% 中等症
93% 正常
左前-右後 135mm
132mm
145mm
146mm
右前-左後 128mm
145mm
138mm
152mm
対角左右差
(CA)
7mm 中等症
13mm 重症
7mm 中等症
6mm 軽症
対角左右差割合
(CVAI)
5.4%
9.6%
5.0%
4.3%

治療開始前

周囲の方からは「成長すれば髪も生えて目立たなくなる」と言われていたそうですが、いわゆる“絶壁”であることをとても心配されていらっしゃいました。
器具の計測では〈幅/前後〉104%と 最重症 、右後頭部の平坦さも見られ、〈対角左右差〉7mmで 中等症 でした。

治療中(約6か月間)

頭皮が汗疹(あせも)にならないよう気を配られるご両親にサポートもしつつ、メールでのご相談にも応じながら経過を観察しました。

治療終了後

器具計測では〈幅/前後〉95%の 中等症 、〈対角左右差〉7mmの 中等症 。3Dスキャンでは〈幅/前後〉93%の 正常 、〈対角左右差〉6mmの 軽症 となりました。
短頭の度合いを表す器具計測の〈幅/前後〉は最重症から中等症、斜頭を表す3Dスキャナーの〈対角左右差〉は重症から軽症と2段階の改善を得ることができました。

ヘルメット治療終了から2か月後

ご両親からは「完璧に綺麗な丸い形ではありませんが、 後頭部も丸みが出ていて、ほとんど気にならない程度になりました」とのご報告をいただきました。

治療前後比較

右後頭部は丸みを帯び、後頭部も平坦さが改善しています。治療の後半は夏の暑い中で大変だったと思いますが、お父様、お母様、そしてYちゃんの頑張りで良い結果が得ることができました。

治療前(上図の緑の部分)

治療後(上図の赤の部分)

〈診断〉頭位性斜頭 / Sくん(仮名)
診断 頭位性斜頭
通院期間 2022年11月7日~2023年6月19日
ヘルメット装着期間 生後4か月~10か月

治療前後の計測結果

〈上段〉器具による計測値
〈下段〉3Dスキャナーによる計測値

治療前 治療後
頭囲
419mm
44.0cm
467mm
122mm
127mm
137mm
141mm
前後 135mm
138mm
147mm
157mm
幅/前後
(CI)
90.3%
90.0%
90.1%
92.0%
左前-右後 117mm
130mm
142mm
150mm
右前-左後 137mm
145mm
154mm
157mm
対角左右差
(CA)
20mm 最重症
15mm 重症
12mm 中等症
7mm 中等症
対角左右差割合
(CVAI)
17.1%
12.2%
8.5%
4.4%

治療開始前

右頭位性斜頭の診断で〈対角左右差〉18mmの 最重症 、3Dスキャナーでは15mmの 重症 でした。

治療中(約6か月間)

生後4か月からヘルメット治療を開始しました。Sくんがヘルメットを嫌がったり、 暑くて汗疹ができたり、圧迫される部分が赤くなるなどのご苦労もあり、治療で生じるご不安についてもサポートも継続しました。
ヘルメット治療という特性上、頭皮のトラブルや、Sくんのストレスもないわけでないため、最後までやり遂げることができるか心配になる方もいっらしゃいますが、治療をすることで起こるさまざまな心配や不安のご相談にも積極的に応じています。

治療後

器具計測では〈対角左右差〉12mmの 中等症 、3Dスキャナーでは7mmの 中等症 と良好な結果を得ることででき、2段階の改善となりました。
最後の1か月は装着されていなかったと伺っていますが、治療中盤までにある程度の頭の形が整っていたためか、最終的には目標通りの結果となりました。

治療前後比較

右後頭部が良くなり、取り組みの成果が出ています。ご両親からも「初めの頭の形と終了時の形では見違えるほどの変化があった」と感想をいただきました。

治療前(上図の緑の部分)

治療後(上図の赤の部分)

頭のかたち外来の流れ

完全予約制〈毎週月曜日午後〉
1

診察の前に問診票のご記入

2

赤ちゃんの耳と大泉門の位置を確認し写真撮影

3

頭の計測(キャリパーという器具を使用)
上記の流れによって、頭位性斜頭・短頭と診断をつけます。

4

頭部レントゲン検査を行い、頭蓋骨縫合早期癒合症の有無を確認します。(場合によって、頭部CTを実施します)

5

頭蓋骨縫合早期癒合症が疑われた場合は治療経験が豊富な施設をご紹介させていただきます。

頭のかたちに合わせてオーダーメイドで作るこのヘルメ ットは、頭のかたちと対称性を改善するために、頭の突出した部分を支え、成長の足りない部分にはスペースを確保してくれます。そうすることで外圧がかかっていた部分の成長を待って、対称的なかたちへと誘導することが期待されます。ヘルメット治療は生後4〜6か月の間に開始することが推奨されていて、この間であれば治療開始が早ければ早いほど矯正効果が高くなることが分かっています。なお、頭蓋形状矯正療法に医療保険を使用することはできないため、ヘルメット治療はすべて自費診療になります。

  • 全ての医療行為と同様、全ての方で期待通りの治療効果が得られる保証はありませんので、ご理解いただければと思います。
  • まれに頭皮(皮膚)トラブルが発生することがあります。その場合、かかりつけの小児科医や皮膚科医と連携して対応していきます。その他、ご家族様の気になる点があれば密に連絡ととり都度、対応しております。
費用 440,000円(一連費用、2022年5月時点)
ヘルメット代金のほか、ヘルメットの調整代金などが含む
治療期間 ヘルメット発注から最終確認まで約7か月/通院回数12回
※ヘルメットの装着状況や進捗によって前後します。

所属医師

非常勤
下地 一彰 (しもじ かずあき)

脳神経外科、脳卒中・神経センター

略歴 1996年 順天堂大学医学部卒業 順天堂大学脳神経外科入局
2000年 米国National Institutes of Health(国立衛生研究所)留学
2010年 順天堂大学医学部付属 順天堂医院脳神経外科准教授(小児脳神経外科担当)
2021年 国際医療福祉大学成田病院 脳神経外科病院勤務
資格など 国際医療福祉大学病院教授
日本脳神経外科学会認定専門医
日本脳卒中学会認定専門医
神経内視鏡技術認定医
難病指定医

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03-3752-3151(代表番号)

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