重要なお知らせ

微小血管狭心症・冠微小循環障害(CMD)外来

微小血管狭心症・冠微小循環障害(CMD)とは、
発作的に安静時や労作時に持続する胸部違和感(胸の痛みや絞扼感)を生じる疾患です。

池上総合病院循環器内科は、2023年4月、上記のような原因不明の持続性胸痛(微小血管狭心症、冠微小循環障害 CMD)に対する、専門外来を開始いたしました。

担当する清岡医師は、この疾患がまだほとんど知られていなかった15年以上前から全国でいち早く診療や研究に取り組んできたスペシャリストで、どこの病院でも原因不明とされるばかりの胸の痛みに不安を抱えた方が、数々の病院を転々とされた末に清岡医師の存在を知り、九州など遠方からも診療に訪れるほどで、学会や研究会での講演等を通し、医師の間でもまだ理解が十分とはいえないこの疾患についての普及につとめております。

非常勤
清岡 崇彦 (きよおか たかひこ)

循環器内科

資格など 東海大学医学部内科学系准教授
医学博士(岡山大学)
日本循環器学会認定 循環器専門医
日本心血管インターベンション治療学会認定専門医
日本心血管インターベンション治療学会施設代表医
日本心臓リハビリテーション学会心臓リハビリテーション指導士
日本内科学会登録指導医
日本内科学会認定医
医師の臨床研修に係る指導医講習会修了医
身体障害者福祉法指定医(心臓機能障害)
難病指定医
植込型除細動器/ペーシングによる心不全治療研修修了 

微小血管狭心症(冠微小循環障害CMD)について

狭心症は心筋に血液を供給している冠動脈が狭くなり十分な血液が送れなくなった時に生じます。これには従来、血管内に脂分が蓄積して物理的に狭くなる労作性狭心症と普段は血管に問題はないが発作時に血管が痙攣(収縮)して狭くなる冠攣縮性狭心症の2種類があります。これらはニトログリセリンが有効なことが多いので、これまでニトログリセリンがきかない胸痛は狭心症ではないと考えられ、心臓神経症とか肋間神経痛などと診断されることもありました。狭心症としてニトログリセリンがききにくい微小血管狭心症の存在が知られています。

持続性に胸が苦しくなる狭心症の症状を訴える患者さんの中には、微小冠動脈が原因となっている方がいることが近年明らかになりつつあります。微小冠動脈は心臓の血管の95%を占めると言われていますが、心臓カテーテル検査における冠動脈造影や冠動脈CTで見える冠動脈は解像度の問題で心臓の血管のわずか5%に過ぎないのです。上記の検査でみえない0.3mm以下の細い血管に痙攣(収縮)や血管内皮障害などに伴う拡張障害が起こることが微小血管狭心症/冠微小循環障害(CMD)の原因と考えられています。

心外膜血管と微小循環

冠動脈造影検査

持続性の胸部違和感がある方でなかなか診断がつかず病院を転々とする方もあります。女性の場合は更年期にこのような微小血管狭心症(冠微小血管攣縮など)が起こりやすいと言われています。女性ホルモン(エストロゲン)は血管の拡張と関係があり、閉経前後に急激に減少し、血管が攣縮(収縮)しやすくなり、胸部症状が起こると考えられています。これ以外の時期でも30歳代からはじまり、60歳代以降でも発症することがあります。男性でも同様に微小血管狭心症は起こります。当院ハートセンター長である清岡医師は2002年より冠微小血管機能に関する研究をprof. Kajiya、prof.Chilianのもとで行った経歴があり、臨床現場でも長きにわたり、微小血管狭心症の存在を念頭に、診療を行ってきました。前施設では微小血管狭心症に関して2015年より世界7か国14施設の一つとして世界で初めての前向き共同研究に参加しその臨床像や予後を詳細に明らかにしております(Eur Heart J. 2021) 。

2019年頃から欧米より冠動脈に有意狭窄のない虚血性心疾患としてINOCA: ischemia and no obstructive coronary artery diseaseという概念が、提唱され、逆輸入される形で本邦でも注目されてきております。実は清岡医師が以前より積極的に診療を行ってきた冠攣縮性狭心症や微小血管狭心症(冠微小循環障害CMD)がINOCAの大部分を占める疾患なのです。本院では持続性胸痛の原因として見逃されることも多かったこの疾患を、長年の経験を活かし、最新の診断方法にて診断し、適切な治療を行ってまいります。

診断検査

心臓カテーテル検査時の薬剤負荷(アセチルコリン)により診断します。

薬剤負荷時に日常で生じる胸痛や心電図の虚血性変化は認めるが、血管造影上では冠動脈の攣縮が認めない状態で、負荷により右心カテーテルによる冠静脈洞血の乳酸の値が上昇することが心筋内虚血の証明となり、微小血管狭心症(微小血管攣縮)の診断がつきます。またアデノシンを負荷し冠動脈を拡張させた状態で特殊なワイヤーを使用し微小冠動脈の機能の測定を行います。これらの診断方法を採用している医療機関は全国にわずかしかなく、循環器専門医の間でもこの疾患についての情報や知識はまだまだ不足しているのが現状です。

当院では心臓カテーテル検査の時に冠攣縮誘発テストや微小冠動脈の機能測定を行い、冠攣縮性狭心症および微小血管狭心症(冠微小循環障害CMD)の精査を積極的に行っていきます。

治療

内服薬による薬物治療、禁煙などの生活指導が中心です。微小血管の痙攣が原因の場合は安静時に起こり、カルシウム拮抗剤が有効な場合が多く、他の血管拡張薬(ニコランジルetc)を併用することもあります。労作時に症状がおこり、微小血管の拡張障害が原因の場合はβ遮断薬が有効な場合があります。症状にあわせて多剤併用を行うこともあります。生活指導や危険因子の管理のため、心臓リハビリテーションプログラムや禁煙外来を積極的に利用していただき、生命予後やQOLの改善を目指し、総合的な診療を行っていきます。

池上総合病院は(2023年4月)全国にわずか23施設しかないCMD診療の拠点病院の一つとして選ばれ、多施設共同研究も行っていくことになりました。

外来診療

診療日 水曜日午前(第4週のみ)
 

患者様の声

専門外来