持続性の胸部違和感がある方でなかなか診断がつかず病院を転々とする方もあります。女性の場合は更年期にこのような微小血管狭心症(冠微小血管攣縮など)が起こりやすいと言われています。女性ホルモン(エストロゲン)は血管の拡張と関係があり、閉経前後に急激に減少し、血管が攣縮(収縮)しやすくなり、胸部症状が起こると考えられています。これ以外の時期でも30歳代からはじまり、60歳代以降でも発症することがあります。男性でも同様に微小血管狭心症は起こります。当院ハートセンター長である清岡医師は2002年より冠微小血管機能に関する研究をprof. Kajiya、prof.Chilianのもとで行った経歴があり、臨床現場でも長きにわたり、微小血管狭心症の存在を念頭に、診療を行ってきました。前施設では微小血管狭心症に関して2015年より世界7か国14施設の一つとして世界で初めての前向き共同研究に参加しその臨床像や予後を詳細に明らかにしております(Eur Heart J. 2021) 。
2019年頃から欧米より冠動脈に有意狭窄のない虚血性心疾患としてINOCA: ischemia and no obstructive coronary artery diseaseという概念が、提唱され、逆輸入される形で本邦でも注目されてきております。実は清岡医師が以前より積極的に診療を行ってきた冠攣縮性狭心症や微小血管狭心症(冠微小循環障害CMD)がINOCAの大部分を占める疾患なのです。本院では持続性胸痛の原因として見逃されることも多かったこの疾患を、長年の経験を活かし、最新の診断方法にて診断し、適切な治療を行ってまいります。